2016年11月3日木曜日

すべてがFになる

 主人公の犀川創平が時々つぶやく言葉の中に、蛍光ペンで線を引きたくなるフレーズがあ森り、博嗣さんの本音が垣間見える。人間を客観的に見る視点は、まるで生きることの苦しさ哀しさを直視しているようだ。

 この『すべてがFになる』を読むまで、森博嗣さんの本は『自由をつくる自在に生きる』『自分探しと楽しさについて』『孤独の価値』と新書しか読んだことがなかった。最近『作家の収支』を読ことを切っ掛けに小説も読んでみたくなったので、先ず『すべてがFになる』を選んだ。小説は作家のスタイルに慣れないと十分に堪能できないところがあると思うのだが、残念ながら今回は十分に堪能できたとは言えなかった。

 森さん自身がモデルになっていると思われる犀川と萌絵が、森さんが助教授時代に学生の質問に答えることから得たアイディアで紡がれた思われるストーリーの中で謎を解明しようとする。

 森博嗣さんは、殆ど小説を読まないとのことだったので、スタイルをどのように確立されたのかに興味があったのだが、大学の講師~助教授という仕事から得られたもののようだ。ご自身の疑問を紐解くように進むストーリーが興味深い。

 2013年7月から、池井戸潤さん、宮部みゆきさん、高野和明さん、横山秀夫さん、東野圭吾さん、近藤史恵さんの作品を読んできた。その中にはミステリーと呼べるカテゴリーの作品が多いと思うのだが、私は謎解きよりも罪を犯してしまう人の心理の方に興味があるようだ。そういう意味で『すべてがFになる』は、もう少し特殊な運命を背負った登場人物の心理を描いてほしかったなぁ~と思ってしまう作品であった。もしかしたら、読者に続編を買わせるためにあえて描き切っていないのかもしれないけれど…

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