2016年11月26日土曜日

人生を変える勇気 - 踏み出せない時のアドラー心理学

 この本では「すべての悩みは対人関係の悩みであり、神経症も心の問題ではなく、対人関係の問題だと考えます。」として、対人関係の改善に努めることを提案しています。
 
 人は、生きるために働いているのであって、働くために生きているのではありません。働くことは人生の課題の一つではあっても、働くことだけが人生ではありません…他の人がどう思おうと、一番大切なことは、自分の人生を生きること…自分が仕事で貢献していると思えたら、上司や同僚から認めてほしいという意味での承認欲求は消えます。依存していれば、他者のに認められようとするために生きることになりますから、自分の人生を生きられないことになってしまいます。自分の仕事の価値はいかなる評価、承認に先行して、まずは自分で認めるものです。

 「本物の芸術家であれば、他者の評価で一喜一憂するようなことはありませんし、誰かに認められるために、絵を描いたり、作曲したしたりはしません。たとえ誰からも認められなくても、自分の作品に価値があることを知っているはずです。他者からの商品は、必要ではないということです」他の仕事でもきっと同じです。

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小説家という職業

 森先生は、「オリジナリティのあるものを生み出すことが最重要」と仰る。これは、小説家を目指すことに限らず、ビジネスも同じだと思います。この本は、すべてのビジネスパーソンの参考になるのではないでしょうか。

 森博嗣先生のこの手の本を読むのは『作家の収支』に続いて2冊目です。森先生にとって小説を書くことは、作家になるためだったわけではなく、趣味に使うためのお金を稼ぐための手段だったわけですけれども、「いざ小説を書き始めると、次から次へと発想が生まれ。書いている物語はもちろん、次のこと、その次のこと、別のシリーズのことなど、どんどん発想される。そういう発想が、執筆の邪魔になるくらいだ。」と書かれているように、やはり非凡な人なのだと思います。その森先生からのアドバイスは、「とにかく、書くこと、これに尽きる」でした。

 「大事なのは、“自分はこれを仕事にする”という“姿勢”である。」小説家に限らず、創造的であることが求められる仕事を自分の仕事にしようとすれば、そこには、具体的なノウハウを知っただけでは越えられない壁が立ちふさがっているはずだ。もしかしたら、この本には、その目に見えない壁の存在を思い知らされる事実が描かれているのかもしれません('◇')ゞ

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2016年11月20日日曜日

アドラー心理学 実践入門---「生」「老」「病」「死」との向き合い方

 紙が薄いのか、インクが染み込みやすい質なのか、蛍光ペンで線を引くと、裏写りしてしまうので、赤と青の色鉛筆で線を引きました(^^;そうしたら真っ赤になりました(^^;

 この本のタイトルには、“入門”という言葉があり易しい文章で書かれていますが、アドラー心理学について理解したいと思っている初心者にとってはレベルが高く、少なくとも事前に『嫌われる勇気』だけは読んでおきたい、願わくば岸見一郎先生のご専門である哲学の入門書も幾つか読んでおいた方が良いのではないでしょうか(・・?。しかしながら、何度も繰り返される贅肉をそぎ落とした内容は、すべてに蛍光ペンで線を引きたくなるほど磨き抜かれたもので、永遠に悩み続けるオジサンにとっては、まさに聖書と言っても言い過ぎではないと思いました。

 「本当に好きなことであれば、時を忘れて打ち込める」もしかしたら、「楽になる」ということは、少しずつ「好きなこと」「時を忘れて打ち込める」ことを増やすことによって、「自分が他者に貢献できること」を増やし、延いては「自信をつける」ということなのかもしれませんね。

 「本当に優れている人は、自分が優れていることを誇示する必要も、証明する必要もありません。」う~ん、そんな人になりたいなって、優れたいのか!?
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2016年11月13日日曜日

ムカシ×ムカシ


 文庫化されるまで待とう!と誓った『ムカシ×ムカシ』。でも見つけてしまうと手に入れたい。

 ハッキリ言って前半は面白くなかった『ムカシ×ムカシ』この物語が読者である私に投げかける謎が掴めず、行間に隠されている手掛かりから何を発見すれば、解明したことになるのか、想像すらできない状況が続き、まったく感情移入することができませんでしたが、途中で他の本に寄り道しながら何とか読み終えることができました。

 根底を流れるテーマは、やっぱり森先生だなぁ~と思えるもので、最後の最後で、アイデンティティと心理との関係を描いたものなのかもしれない。と気づきました。「人間は、自分のアイデンティティを守るために自殺することがある。」という話を聞いたことがありますが、人間は、自分のアイデンティティを守るために、時として血のつながっている親を殺し、自分すら殺すことができるのかもしれません…

 森先生は、比較的アイデンティティを守るということに拘りがない方だと思っているので、このような物語を描いた心境を聞いてみたいです。

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2016年11月12日土曜日

人間は考えるFになる

 このスパーリングのような対談が、ある意味で最高レベルのパフォーマンスだと思ったのは、ここで語られている瑣末な話題の中に垣間見える論点が極めて哲学的であったから…

 森博嗣先生のことについては、おおよそ1年間かけて、著書を51冊読んできたので、それなりに知っているつもりです。でも、土屋賢二先生のことについては、まったく存じ上げない状態で読み始めました。

 最終章の「そこに論点があるか、あるいは何もないか」では、編集者らしき人物が二名登場し「テーマに沿ってお話をいただきたい」という発言もありますが、そもそもテーマらしきものの提示が認められず、最後までテーマが何か、それとも何もないか、解らないまま終了しました。

 正直、あまり期待していなかったのですが、読んで楽しい内容でした。対談に限らず、インタビューでもそうですが、読者に紹介したい人物の魅力を引き出すには、対談する人物同士、あるいはインタビュアーが魅力的な人物でなければなりません。土屋賢二さんは、自虐的に自己開示するという「肉を切らせて骨を断つ」かのような必殺技で、森博嗣さんが普段見せない断面を見せてくれています。

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2016年11月6日日曜日

最強英語脳を作る

 私の英語力は、TOEIC 320~330なので、『最強英語脳を作る』などというタイトルの本は、関係ないのですが…
 
 「英語を学んでいて一番面白いところは、英語のマインド・セットをどのぐらい理解して、それを駆使できるようになるかということ…道具箱の中の道具が増えるということが、言語習得の一番の魅力」

 日本にいる時は英語を勉強するのも嫌なのに、海外に出かけると何とか話そうとする…それは止むを得ないからという理由だけではなく、自分の拙い英語や気持ちがどこまで通じるか?ということを試す面白さがあるからかもしれない。そして相手の応答を日本語に翻訳しようとするのではなく、リピートすることによって、英語のままで理解しようとしている自分を発見することも楽しい。もしかしたらこのような姿勢が茂木先生が仰る、言語としての英語が話せるということや、マインド・セット、英語的な発想ができるということに繋がるのかもしれない。

 心構えだけは、私のような永遠の初心者にとっても参考になる部分があると思います。私のように英語が苦手な人は、英語を学ぶ!というよりも、英語を使う!という感覚で挑んだ方がよいかもしれません(-_-;)

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笑わない数学者

『すべてがFになる』や『冷たい密室と博士たち』に比べると、トリックにITが絡まないので、用語の難易度は低いかな?萩原刑事が定着すると、犀川探偵と萩原刑事との協力関係が成立し、漫画チック街道驀進?

 何を書いてもネタバレになってしまいそうなので、私がインパクトを受けた天王寺翔蔵博士と、犀川創平の言葉をピックアップしたい。

 先ず、天王寺博士「人間の最も弱い部分とは、他人の干渉を受けたいという感情だ。自己以外に自己の存在を求めることが、人間の本能としての幻想だ。」
 
 自分の弱い部分を抑圧し、プラネタリウムの地下にこもる老いた数学者…博士の求める自由とはいったい何なのだろう?

 次に犀川「どんな斬新な思想も、どんな先進の才能も、最後は防御にまわるものだ…純粋に攻撃的な行為、戦争や殺人でさえ、最後は防御になる…弱いから防御するんだ…」

 今のところ、提示された謎を解き続けている犀川創平だが、今後、純粋に攻撃的な行為など、何かを求めた行動をすることがあるのだろうか?

 これらは、いずれも森博嗣さんご自身の人生観なのだろうと思うのだが、作品の世界観を特徴づける効果的なスパイスになっている。

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2016年11月5日土曜日

冷たい密室と博士たち

 森博嗣さんは「プロットを用意しない」と仰っているが、行き当たりばったりで続編をよみたくなるような作品を書けるのだとしたら、天才だと言わざるを得ない。薄い人物描写もそのための伏線?のような気すらする。

 『すべてがFになる』を読み終わった時、この物語は未だ終わっていない(著者は全てをを描き切っていない)と感じたので、続編を読まずにいられなくなった。そしてこの2作目を読み終わった今も、その謎が依然解けていないと感じられる。個人的には、Who,How,Whyの全てが謎という推理小説は著者の独りよがりで、まとまるはずが無いし読者を楽しませることはできないと思っているのだが、このシリーズはあえてそれに挑戦している。結果的に私は(皆さんも?)推理することを許されず「なんだそうだったのか」という読後感を得るのだった。

 ファンが多いと聞くこのシリーズに満足できなかったと告白することは勇気のいることだが、古き良き時代の推理小説という意味では秀作であるという前置きをすることで許しを請いたい。どこが納得できなかったかと言うと3つの主題を全て謎にするという挑戦の結果、動機を暗示する伏線を撒き切れていないために、その動機が生み出す犯人やアリバイに繋がる事実が、最後に探偵が推理を述べるところで披露されることだ。

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2016年11月3日木曜日

すべてがFになる

 主人公の犀川創平が時々つぶやく言葉の中に、蛍光ペンで線を引きたくなるフレーズがあ森り、博嗣さんの本音が垣間見える。人間を客観的に見る視点は、まるで生きることの苦しさ哀しさを直視しているようだ。

 この『すべてがFになる』を読むまで、森博嗣さんの本は『自由をつくる自在に生きる』『自分探しと楽しさについて』『孤独の価値』と新書しか読んだことがなかった。最近『作家の収支』を読ことを切っ掛けに小説も読んでみたくなったので、先ず『すべてがFになる』を選んだ。小説は作家のスタイルに慣れないと十分に堪能できないところがあると思うのだが、残念ながら今回は十分に堪能できたとは言えなかった。

 森さん自身がモデルになっていると思われる犀川と萌絵が、森さんが助教授時代に学生の質問に答えることから得たアイディアで紡がれた思われるストーリーの中で謎を解明しようとする。

 森博嗣さんは、殆ど小説を読まないとのことだったので、スタイルをどのように確立されたのかに興味があったのだが、大学の講師~助教授という仕事から得られたもののようだ。ご自身の疑問を紐解くように進むストーリーが興味深い。

 2013年7月から、池井戸潤さん、宮部みゆきさん、高野和明さん、横山秀夫さん、東野圭吾さん、近藤史恵さんの作品を読んできた。その中にはミステリーと呼べるカテゴリーの作品が多いと思うのだが、私は謎解きよりも罪を犯してしまう人の心理の方に興味があるようだ。そういう意味で『すべてがFになる』は、もう少し特殊な運命を背負った登場人物の心理を描いてほしかったなぁ~と思ってしまう作品であった。もしかしたら、読者に続編を買わせるためにあえて描き切っていないのかもしれないけれど…

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